税務・実務
本記事は一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。記載は2026年8月19日時点の法令・国税庁公表資料に基づきます。個別の判断は税理士にご相談ください。
12月に決済した米国株のプット・オプションで、450ドルのプレミアムを受け取ったとします。確定申告に書くのは円建ての金額です。では、いくらと書けばよいのでしょうか。
その日のドル円が147円台だったとしても、147円のどれを使うのかがまだ決まっていません。銀行が電信相場として公表するレートは3つあります。買う側のレート、売る側のレート、その真ん中です。大手行の対米ドルは真ん中の上下に1円ずつ開いているのが一般的で、この幅をどう採るかで450ドルの円換算額は900円ほど動きます。1年分を積み上げれば、差は無視できない大きさになります。
検索して出てくる解説の多くは、売却はTTB、取得はTTSと書いています。これは正確な説明です。ただし米国株の「現物」を売ったときの話であって、根拠になっている規定は株式等の譲渡所得等について置かれたもので、オプションの雑所得に及ぶ旨の記述はありません。この記事は、その線引きから始めます。
この記事でわかること
- 総合課税の雑所得の円換算は、原則が取引日のTTM(仲値)であること
- 株式で使われるTTB・TTSの規定は、株式等の譲渡所得等に限った規定であること
- TTB・TTSを認める「ただし書き」に「業務に係る」という条件が付いていること(ここは断定を避けます)
- 「いつのレートか」を決める「取引を計上すべき日」が、オプションでは一通りに決まらないこと
- レートが無い日・1日に2つある日・どの金融機関のレートか、というすぐ使える取り扱い
- 年間平均レートを使ってよいと読める国税庁の資料が見当たらないこと
この記事の前提
以下はすべて、米国株オプションの損益が総合課税の雑所得として扱われるという前提の上に成り立ちます。海外の取引所に上場するオプションは申告分離課税の対象として列挙されておらず、原則である総合課税に戻る、という条文の読み方です。なぜそうなるのかは米国株オプションの税金と確定申告で説明しています。
ただし、国税庁がこの取引を名指しして「総合課税の雑所得である」と述べた公表資料は見当たりません。この前提自体が条文からの解釈であることを承知のうえでお読みください。前提が変われば、以下の結論も変わります。
先に結論:原則は「取引日の仲値(TTM)」
外貨建ての取引を円に直すルールは、所得税法57条の3が定めています。条文はこう書かれています。
居住者が、外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいう。…)を行つた場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額(…)は当該外貨建取引を行つた時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとする。(所得税法57条の3第1項)
条文には「TTM」とも「仲値」とも書かれていません。「外国為替の売買相場」としか言っていません。どの相場を使うのかを決めているのは、その下の通達です。
法第57条の3第1項((外貨建取引の換算))の規定に基づく円換算(同条第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(以下この項において「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(…「電信売相場」…)と対顧客直物電信買相場(…「電信買相場」…)の仲値(…「電信売買相場の仲値」…)による。(所得税基本通達57の3-2 本文)
電信売相場がTTS、電信買相場がTTB、その仲値がTTMです。原則は取引日のTTMと読めます。ここまでは、収入も経費も同じ扱いです。
| 呼び方 | 正式な名称 | どちら側のレートか |
|---|---|---|
| TTS | 対顧客直物電信売相場 | 金融機関が外貨を売る(こちらが外貨を買う)ときのレート。仲値より円安側 |
| TTM | 電信売買相場の仲値 | TTSとTTBの中間。所得税の原則はここ |
| TTB | 対顧客直物電信買相場 | 金融機関が外貨を買う(こちらが外貨を売る)ときのレート。仲値より円高側 |
株式のTTB・TTSは、別の系統の規定です
「売却はTTB、取得はTTS」という説明の出どころは、租税特別措置法関係通達の37の10・37の11共-6です。規定は実在します。ただし、置かれている場所が違います。
一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に当たり、株式等の譲渡の対価の額が外貨で表示され…当該譲渡の価額は、原則として、…約定日における…対顧客直物電信買相場により邦貨に換算した金額による。…なお、取得の対価の額の邦貨換算については、対顧客直物電信売相場により、上記に準じて行う。(措置法通達37の10・37の11共-6)
この通達が置かれているのは、措置法37条の10(一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)と37条の11(上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)の共通関係という章です。対象は株式等の譲渡所得等であり、総合課税の雑所得に及ぶ旨の記述はありません。
国税庁の質疑応答事例「外貨建取引による株式の譲渡による所得」も、関係法令通達としてこの37の10・37の11共-6を挙げています。米国株の現物を売ったときに約定日のTTBを使うのは、この規定があるからです。オプションには、これに相当する規定が置かれていません。
よくある誤解:「同じ証券口座の取引なのだから、株式と同じ換算でよいはず」
- 換算のルールは口座ごとではなく、所得の区分ごとに決まっています。米国株の現物は申告分離課税の譲渡所得等、オプションは総合課税の雑所得で、根拠になる規定が別々です
- 措置法通達37の10・37の11共-6は株式等の譲渡所得等に置かれた規定です。同じ口座で建てたオプションの損益計算に、そのまま効くわけではありません
- この違いは繰越や損益通算でも同じ形で現れます(米国株オプションの損失は繰り越せるか)。課税のレーンが違えば、適用される規定も違います
- ただし「では雑所得ではどうするのか」を国税庁が個別に示した資料も見当たりません。株式と同じにしてよい根拠も、してはいけない根拠も、名指しでは存在しないのが実情です
TTB・TTSを認める「ただし書き」には条件が付いています
所得税基本通達57の3-2には続きがあります。この続きが、実務でいちばん誤読されている箇所です。
ただし、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に係るこれらの所得の金額…の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の経費(原価及び損失を含む。…)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。(所得税基本通達57の3-2 ただし書き)
雑所得についてTTB・TTSを認める規定は、確かに存在します。ただし「雑所得」ではなく「雑所得を生ずべき業務に係る」所得と書かれています。この5文字が効いています。
では「業務に係る雑所得」とは何か。国税庁はタックスアンサーNo.1500で、「副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの」と説明しています。所得税基本通達35-2は業務に係る雑所得を例示しており、動産の貸付け、工業所有権の使用料、原稿料や講演料、金銭の貸付けなどが並びます。デリバティブ取引・先物・オプションを名指しした号はありません。
ただし、この例示には(7)「営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得」という包括的な号が置かれています。継続的に、利益を目的として売買しているオプション取引が、ここに読み込まれる可能性は残ります。この号がどこまで及ぶのかについても、国税庁の個別の説明は見当たりません。名指しの例示が無いことをもって「業務に当たらない」と決めることはできない、というのが正確なところです。
ここは断定を避けます
- 個人が投資として行うオプション取引が「業務に係る雑所得」に当たるかを明示した国税庁の公表資料は、見当たりません。当たるなら継続適用を条件にTTB・TTSを選べ、当たらないなら原則のTTMだけ、という分かれ道になります
- 通達35-2に名指しの例示が無い一方、(7)の包括的な号があるため、どちらの結論にも一次情報の裏づけがありません
- この判断は取引の規模や継続性などの事実関係によるもので、納税者が任意に選べる性質のものではありません
- 迷った場合、原則であるTTMを継続して使うほうが、後から根拠を示せます。ただしこれは安全側に寄せた実務判断であって、TTB・TTSが誤りだと確認できたわけではありません
- ご自身の取引がどちらに当たるかは、税務署または税理士にご確認ください
参考になる材料が1つあります。国税庁の質疑応答事例「外国通貨で支払が行われる不動産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算の際の円換算」は、業務ではない譲渡所得についても原則はTTMだとしたうえで、TTB・TTSを使える根拠を、このただし書きではなく通達の(注)4(本邦通貨で外貨を購入して直ちに資産を取得する場合など)と同趣旨により説明しています。国税庁は、業務に係らない所得でTTB・TTSを使うとき、ただし書きを経由させていません。ただし書きの「業務に係る」が飾りではないことの傍証と考えられます。
「いつのレートか」が、オプションでは一通りに決まりません
通達は「その取引を計上すべき日における」相場と書いています。この日をここでは取引日と呼びます。ところが通達は、取引日がいつなのかを定義していません。各所得の収入すべき時期のルールに委ねる構造になっています。
では雑所得の収入すべき時期はどこに書かれているのか。所得税基本通達36-14がそれに当たりますが、内容は次の2つだけです。
(1) 法第35条第3項《雑所得》に規定する公的年金等 …(支給の基礎となる法令等により定められた支給日など)
(2) (1)以外のもの その収入の態様に応じ、他の所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期の取扱いに準じて判定した日(所得税基本通達36-14。(1)は要約)
公的年金以外の雑所得は、すべて(2)が受けています。「他の所得の取扱いに準じて判定する」という建て付けです。ただし国税庁は、オプション取引が何に準じるのかを示していません。デリバティブ取引・先物・オプションに触れた号は、この通達にありません。
株式であれば、この点は手当てされています。措置法通達37の10・37の11共-1が収入すべき時期を定め、換算の37の10・37の11共-6が約定日と明記しています。オプションには、その両方がありません。
付け加えると、これは海外のオプションだけの話ではありません。申告分離課税の「先物取引に係る雑所得等」については、租税特別措置法41条の14が「差金等決済をした場合」として課税の契機を定めています。ただし、その細目を詰めた通達は置かれていません。租税特別措置法関係通達に41条の14関係の項目は無く(隣の41条の15=繰越控除の関係通達は存在します)、タックスアンサーNo.1522にも収入すべき時期の記述がありません。通達レベルで細目が無いという点では、国内の先物・オプションでも事情は同じということになります。
しかもオプションは、建玉の消え方が1つではありません。
| 建玉の終わり方 | 候補になる日 | 国税庁の一次情報 |
|---|---|---|
| 反対売買で決済した | 約定日/受渡日 | 見当たらない |
| 権利行使した・割り当てられた | 権利行使日/株式の受渡日 | 見当たらない |
| 満期に価値ゼロで消滅した | 満期日(約定という行為が無い) | 見当たらない |
| 売建てのプレミアムを受け取った | 約定日/建玉が消えた日 | 見当たらない |
これらを個別に述べた国税庁の公表資料は確認できませんでした。この記事で「約定日を使うべきです」と書くことはできません。約定日を基準として説明する解説が多く見られますが、それは通達で裏づけられた取り扱いではありません。
実務上、判断が要るのはどの日を選ぶかよりも、選んだ基準を1年を通して変えないことです。反対売買は約定日、満期消滅は満期日、というように基準を先に決め、その基準を記録に残しておけば、後から説明できる状態になります。どの日を採るかについては、税務署または税理士にご確認ください。
レートが無い日・1日に2つある日・どの金融機関か
ここからは通達の(注)に書かれている、そのまま使える取り扱いです。米国市場が開いていて日本が休日という日は毎年あるので、実際に必要になります。
通達57の3-2の(注)が定めていること
- どの金融機関のレートか((注)1):「原則として、その者の主たる取引金融機関のものによることとする」。ただし「合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める」とされています。三菱UFJ銀行の公表レートを毎年使い続けるといった運用が、これに当たると考えられます
- その日にレートが無い場合((注)3(1)):「当該日に為替相場がない場合には、同日前の最も近い日の為替相場による」。日本の祝日や年末年始は、直前の営業日のレートを使うことになります
- その日にレートが2つ以上ある場合((注)3(2)):「その当該日の最終の相場(当該日が取引日である場合には、取引発生時の相場)による」。ただし取引日の相場については「取引日の最終の相場によっているときもこれを認める」とされています
(注)1が求めているのは「合理的なものを継続して使用」することです。年の途中はもちろん、年をまたいでも出どころを変えない運用が、この文言に沿います。都合のよい日だけ別の銀行のレートを拾う運用は、この文言に沿わないと考えられます。
なお、株式の換算を定める措置法通達37の10・37の11共-6が使うのは「その支払をする者の主要取引金融機関」のレートで、こちらは証券会社側を指しています。(注)1の「その者の主たる取引金融機関」は納税者自身の取引銀行を指しており、同じような言い回しですが主語が違います。
年間平均レートは使えるか
1年分の取引を1つのレートでまとめて換算できれば、作業は大幅に軽くなります。ただし、それを認めると読める国税庁の資料は見当たりません。
通達57の3-2の(注)2は平均レートの使用に触れていますが、条件が2つ付いています。1つは「不動産所得等の金額の計算においては」という柱書きで、ここでも業務に係る所得に限られます。もう1つは、認められる平均の範囲が「1月以内の一定期間における…平均値」までという点です。年平均はこの枠を明らかに超えます。
年単位の換算に最も近いのは通達57の3-6ですが、これは国外で業務を行う個人が、その業務の損益計算書や収支内訳書を外国通貨表示で作成している場合の規定で、しかも使うのは年平均ではなくその年の年末の相場です。日本国内から米国市場で取引している個人には、そのまま当てはまりません。
「使ってはいけない」と法令が明記しているわけではありません。そうではなく、拠るべき根拠が見当たらないという状態です。取引ごとの換算を積み上げるほうが、説明のつく形になります。
令和7年の通達改正で、換算ルールは変わっていません
所得税基本通達57の3-2には「令7課個2-10、課法12-5、課審5-10改正」という改正履歴が付いています。2025年(令和7年)に手が入っているので、換算ルールが変更されたのではないかと読めます。
国税庁が公表している新旧対照表で確認したところ、変わったのは条文相互の参照番号だけでした。「以下57の3-7までにおいて」が「以下57の3-6までにおいて」に、3か所そろって改められています。同じ改正で旧57の3-6(延払基準の適用)が廃止され、その後ろの通達が1つずつ繰り上がったことに伴う調整です。
新旧対照表に、本文・ただし書き・(注)の実体的な変更は現れていません。原則がTTMであること、ただし書きが「業務に係る」所得に限られることは、いずれも改正前と同じです。2020年から2023年ごろに書かれた解説記事の内容が、この点で古くなっているわけではありません。
実務でやっておくこと
- 使うレートの出どころを1つに決める。主たる取引金融機関の公表レートを1つ選び、同じ出どころを使い続けます。(注)1が求めているのは「合理的なものを継続して使用」することで、年をまたいでも変えない運用がこれに沿います
- 取引日の基準を先に決めて、書き留めておく。反対売買・権利行使・満期消滅のそれぞれについて、どの日を取引日とするかを決め、その基準をメモに残します。通達に定めが無い以上、説明できる形にしておくことが備えになります
- 取引ごとにレートを記録する。後から1年分をまとめて調べ直すのは、取引回数が増えるほど負担になります。決済のたびに日付・ドル建て金額・使ったレート・換算後の円額を1行ずつ残しておけば足ります
- 証券会社の円貨表示をそのまま使わない。取引報告書に円建ての金額が並んでいても、その会社が独自のレートで換算した参考値である場合があります。どのレートで換算されているかを確認せずに転記すると、根拠を説明できない数字になります
- 現物とオプションを分けて記録する。換算の根拠になる規定が別である以上、最初から分けておくほうが申告時に整理が済みます
- 経費側の換算も忘れない。ドル建てで支払っているツール利用料やデータ料金も同じ換算が要ります(投資ツール代は経費にできるか)
2026年8月19日時点の法令・公表資料 所得税基本通達57の3-2は令和7年に改正が入った通達です。申告前には最新の条文をご確認ください。
出典・最新情報
- 所得税基本通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係|国税庁(57の3-2 本文・ただし書き・(注)1〜5、57の3-6)
- 所得税法(57条の3)|e-Gov法令検索
- 租税特別措置法関係通達 37条の10・37条の11共通関係|国税庁(共-6 外貨で表示されている株式等に係る譲渡の対価の額等の邦貨換算)
- 所得税基本通達 36-14(雑所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期)|国税庁
- 外貨建取引による株式の譲渡による所得|国税庁 質疑応答事例
- No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例|国税庁/租税特別措置法関係通達(所得税関係)の一覧
- 外国通貨で支払が行われる不動産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算の際の円換算|国税庁 質疑応答事例
- No.1500 雑所得|国税庁/所得税基本通達35-2(業務に係る雑所得の例示)
- 令和7年6月30日付 課個2-10ほか 法令解釈通達の一部改正|国税庁(新旧対照表)
よくある質問(FAQ)
Q. 結局、TTMとTTBのどちらを使えばよいのですか。
A. 通達の原則は取引日のTTM(仲値)です。TTB・TTSを選べるただし書きは「雑所得を生ずべき業務に係る」所得の計算に限られており、個人の投資としてのオプション取引がこれに当たるかを示した国税庁の資料は見当たりません。原則であるTTMを継続して使うほうが後から根拠を示せますが、ご自身の取引がどちらに当たるかは税理士にご確認ください。
Q. 米国株の現物では約定日のTTBと聞きました。オプションも同じでよいですか。
A. 現物のTTB・TTSの根拠は措置法通達37の10・37の11共-6で、これは株式等の譲渡所得等に置かれた規定です。総合課税の雑所得に及ぶ旨の記述はありません。同じ証券口座の取引であっても、所得の区分が違えば根拠になる規定も違います。
Q. 満期に価値ゼロで消滅したオプションは、いつのレートで換算しますか。
A. この点を述べた国税庁の公表資料は確認できませんでした。通達は「取引を計上すべき日」としか定めておらず、オプションの満期消滅について個別の定めがありません。基準を決めて1年を通して一貫させ、その基準を記録に残したうえで、税務署または税理士にご確認ください。
Q. 1年分をまとめて年間平均レートで換算してはいけませんか。
A. 認めると読める国税庁の資料が見当たりません。通達が平均レートを認めているのは「1月以内の一定期間」の平均までで、しかも業務に係る所得の計算に限られています。年平均はこの枠を超えます。
Q. 日本が祝日で為替レートが公表されていない日に決済しました。
A. 通達の(注)3(1)により、その日の前で最も近い日の相場によることとされています。年末年始や日本の祝日に米国市場が開いている日は毎年あるため、実務で必要になる取り扱いです。
Q. どの銀行のレートを使えばよいですか。
A. 通達の(注)1は「原則として、その者の主たる取引金融機関のもの」としたうえで、「合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める」としています。継続して使用していることが前提になります。なお、株式の換算を定める措置法通達37の10・37の11共-6が使う「主要取引金融機関」は証券会社側を指しており、こちらとは主語が違います。
Q. 証券会社の年間取引報告書に円建ての金額が出ています。そのまま使えますか。
A. その会社がどのレートで換算した金額かによります。会社ごとに扱いが異なるため、円建ての数字が何を基に計算されたものかを確認せずに転記すると、根拠を説明できない状態になります。各社の書類の違いについては改めて取り上げます。
Q. 令和7年の通達改正で換算のルールは変わりましたか。
A. 国税庁の新旧対照表で確認したところ、57の3-2について改正されたのは条文相互の参照番号だけでした。本文・ただし書き・(注)の実体的な変更は、対照表に現れていません。
まとめ
- 総合課税の雑所得の円換算は、原則が取引日のTTM(仲値)。所得税法57条の3に「TTM」とは書かれておらず、決めているのは通達57の3-2です
- 「売却はTTB、取得はTTS」の根拠は措置法通達37の10・37の11共-6で、株式等の譲渡所得等に置かれた規定。オプションに同じ規定はありません
- TTB・TTSを認めるただし書きは「雑所得を生ずべき業務に係る」所得に限られ、投資としてのオプション取引が当たるかを示した資料は見当たりません
- 換算の基準日である「取引を計上すべき日」は通達に定義が無く、反対売買・権利行使・満期消滅・割当のいずれについても国税庁の一次情報が確認できません。雑所得の計上時期を定める通達36-14は「他の所得の取扱いに準じて判定した日」とするだけで、何に準じるかを示していません
- これは海外オプション固有の問題ではありません。申告分離課税の先物取引でも、措置法41条の14が「差金等決済をした場合」と定めるだけで、細目の通達は置かれていません
- レートが無い日は直前の最も近い日、1日に複数ある日は最終の相場、金融機関は主たる取引金融機関または合理的なものを継続使用((注)1・(注)3)
- 年間平均レートを認めると読める資料は見当たりません。通達が認める平均は1月以内かつ業務に係る所得の計算に限られます
- 令和7年の改正は参照番号の調整であり、換算ルールの変更ではありません
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※本記事は一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。記載は2026年8月19日時点の内容です。制度は改正されます。個別の判断は必ず税理士にご相談ください。個別のご質問にはお答えできません。
※本記事は一般的な情報提供であり、投資助言ではありません。記載は執筆時点の情報です。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。