※この記事は MarketChameleon 非公式の日本語教育ガイドです。MarketChameleon 社が発行・推奨・スポンサーしているものではありません。掲載しているスクリーンショットは操作説明の目的でのみ使用しています。
あるオプションの建玉(Open Interest)が前日から3,754枚増えていた、という数字を見たとします。ここで「誰かが新しくポジションを取った」と読みたくなります。ところが、その日の出来高が129,436枚もあったのに建玉が13,748枚しか増えていない、という別の銘柄もあります。出来高と建玉の増加は、まったく違う量です。Market Chameleon の Churn タブは、この差を「出来高のうち何%が新しい建玉に変わったか」という1つの列(Conversion)で見せてくれます。しかも、その建玉が単独の売買なのか、スプレッドの片脚なのかまで分けて表示します。
この記事でわかること
- 建玉が増えたときに「新規の建て」と決めつけてはいけない理由
- Dashboard で、建玉が大きく動いた銘柄と建玉を拾う手順
- Churn タブの Conversion(出来高→建玉の変換率)と %Multi-Leg の読み方
- 建玉の増減とIVの増減を組み合わせた4分類(Long Buildup / Short Buildup など)
- Time and Sales で「実際にいくらのIVで約定したか」まで下りる手順
本記事の数値はすべて実際の画面から取っています。取得は 2026年8月7日(金)の取引終了後で、画面が表示していた基準日をそのまま記載しました(銘柄サマリーは8月6日クローズ基準、Churn と Time and Sales は8月7日クローズ基準、いずれも15分遅延データ)。特定の銘柄や取引を推奨するものではありません。
なぜ「建玉が増えた」だけでは判断できないのか
建玉は、まだ決済されずに残っているオプション契約の枚数です。出来高は、その日に売買が成立した枚数です。この2つは同じ日に別々に動きます。
同じ日に1枚のオプションが10回売買されても、最初に建てた人が最後まで持ち続けていれば建玉は1枚のままです。逆に、出来高が1,786枚しかないのに建玉が1,719枚増えることもあります。つまり、出来高は「どれだけ手が動いたか」、建玉の増加は「どれだけ新しいリスクが市場に残ったか」を表しています。
さらに厄介なのは、建玉が増えていても、その中身が何かは数字だけでは分からないということです。誰かが方向に賭けて買ったのかもしれませんし、満期の乗り換え(ロール)かもしれませんし、スプレッドの片脚かもしれません。ここを取り違えると、「大口が強気に賭けた」と読んだものが、実際にはただのスプレッドの一部だった、ということが起こります。
Market Chameleon の建玉まわりの画面は、この「中身が分からない」を段階的に潰していく構成になっています。以下、上から順に下りていきます。
手順①:Dashboard で、動いた場所を拾う
上部メニューの OPTIONS から Open Interest を選ぶと、Option Open Interest Analysis Dashboard が開きます。直接開く場合は marketchameleon.com/Reports/OpenInterestDashboard です。

画面は4つのパネルに分かれていて、それぞれ上部の Change View から表示内容を差し替えられます。タブは Dashboard / By Symbol / By Expiration / By Option Contract / 5-Day Changes の5つです。実際に出ていた数字を挙げます。
- OI % Gainers by Stock(銘柄別の建玉増加率):TDS が建玉40,807枚で前日比+278%、UTHR が44,721枚で+194%、NXPI が128,545枚で+77%。Relative Open Int の列(TDSなら5.3)は、その銘柄の普段の建玉と比べて何倍かを示します。
- OI % Gainers by Contract(個別の建玉の増加):UAA の16-Oct-26満期6.00プットが120,605枚で+69,098枚、STLN の20-Nov-26満期6.00コールが22,268枚で+22,268枚(=前日はゼロ)。
- Elevated P/C Ratio by % Rank:プットコール比率がその銘柄の過去1年で最も高い水準にある銘柄。LMT(比率1.04)、BTG(0.34)などが100%ランクで並んでいました。
ここで拾うのは「候補」であって「答え」ではありません
+278% という数字は目を引きますが、この時点で分かるのは「昨日ここで何かが起きた」ということだけです。何が起きたかは、次の画面以降で確かめます。ダッシュボードは調べる場所を絞り込むための入口として使います。
手順②:銘柄ページで、水準と5日の流れを見る
気になる銘柄が決まったら、その銘柄ページの OPTIONS → Open Interest に入ります。URLは marketchameleon.com/Overview/AAPL/OpenInterestTrends/ の形です。ここでは分かりやすさのため AAPL(アップル)を例にします。

上段のテキスト要約と、その下の4つのボックスに同じ内容が数字で出ています。8月6日クローズ基準の実測値です。
| 項目 | 現在値 | 前日比 | 5日変化 | 52週平均 |
|---|---|---|---|---|
| 総建玉 | 5,112,874 | +2.5%(51パーセンタイル) | +2.4% | 5,071,550 |
| コール建玉 | 3,026,067 | +3.0% | +7.6% | 2,997,158 |
| プット建玉 | 2,086,807 | +1.8% | −4.3% | 2,074,392 |
| プットコール比率 | 0.7 | −1.1%(41パーセンタイル) | −11.1% | 0.7 |
ここで効いてくるのがパーセンタイルランクです。総建玉511万枚と言われても多いのか少ないのか分かりませんが、「51.4パーセンタイル」と出ていれば、過去1年のちょうど真ん中あたりだと一目で分かります。枚数そのものではなく、この水準の列を先に見る癖をつけると読み違いが減ります。
コールは5日で+7.6%、プットは−4.3%。総建玉はほぼ平年並みなのに、中身はコールに寄ってきている、という読み方になります。プットコール比率が5日で−11.1%というのも同じことを別の角度から言っています。
満期別テーブルと Conversion 列
その下に、満期ごとの1行テーブルがあります。この行こそが、この記事の主題である「出来高と建玉の関係」を最初に示す場所です。8月10日満期の列を読むとこうなっていました。
- 出来高(Volume)117,835 / 建玉 88,460 / 建玉の増加 +34,732
- Volume/ΔOI 3.4 / Conversion +29%
117,835枚が売買されて、そのうち残ったのは34,732枚。割ると29%です。つまりその日に動いた玉の7割は、その日のうちに解消されているということになります。Volume/ΔOI の3.4は、建玉を1枚増やすのに3.4枚ぶんの売買が必要だったという意味で、Conversion の逆数です。
同じ表の8月21日満期を見ると、出来高80,241枚に対して建玉の増加は+1,544枚、Conversion はわずか+2%でした。同じ日の同じ銘柄でも、満期によって性格がまったく違います。
建玉の増減とIVの増減で4つに分ける
満期を選ぶと、その下にコールとプットを左右に並べた明細が出ます。左端の Indicator 列には Long Buildup、Short Buildup といったラベルが付きます。これは建玉の増減とIVの増減の組み合わせで決まる分類です。

| 分類 | 建玉 | IV | 画面の説明 |
|---|---|---|---|
| Long Buildup | 増加 | 上昇 | ロングポジションを積み増している |
| Short Buildup | 増加 | 低下 | ショート側で契約を売り増している |
| Long Liquidation | 減少 | 低下 | ロングポジションを手仕舞っている |
| Short Covering | 減少 | 上昇 | ショートを買い戻している |
同じ「建玉が増えた」でも、IVが上がっていれば買い手が積極的だった可能性が高く、IVが下がっていれば売り手が供給していた可能性が高い、という切り分けです。方向を1つ増やすだけで、読める情報がかなり変わります。
ただし、これはあくまで推定です。画面の説明文も「indicating」「suggesting」という書き方をしていて、断定していません。誰が買って誰が売ったかは、この画面からは分かりません。
手順③:Churn タブで、出来高が何に変わったかを見る
同じ画面のタブを Technical Analysis から Churn に切り替えます。ここが建玉分析でいちばん情報量の多い画面です。

左がコール、右がプットで、それぞれ建玉の増加が大きい順に並びます。列は 満期 / 権利行使価格 / 建玉 / 建玉の増減 / 出来高 / Volume÷ΔOI / Conversion / % Single-Leg / % Multi-Leg / % Contingent です。実際に出ていたコール側の3行を並べると、性格の違いがはっきりします。
| 満期・行使価格 | 建玉 | 建玉の増加 | 出来高 | Conversion | 単独レッグ | スプレッド |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 8/7満期 320コール | 36,559 | +13,748 | 129,436 | 10.6% | 98.5% | 1.5% |
| 8/10満期 325コール | 4,678 | +3,754 | 7,751 | 48.4% | 97.2% | 2.8% |
| 8/14満期 290コール | 1,831 | +1,719 | 1,786 | 96.2% | 15.7% | 84.3% |
3行とも「建玉が増えた」という点では同じです。しかし中身はまるで違います。
- 1行目は出来高が129,436枚と圧倒的に多いのに、Conversion は10.6%。その日に満期を迎える限月で、日中の売買が大半を占め、残ったポジションはごく一部でした。出来高の大きさに引っ張られると読み違えるのはこの型です。
- 2行目は出来高7,751枚と地味ですが、その半分近くが新しい建玉として残りました。枚数は小さくても、新規のポジション形成という意味では1行目より濃い動きです。
- 3行目は Conversion 96.2%。売買のほぼ全部が建玉になっています。ところが %Multi-Leg が84.3%、つまりその建玉の大半はスプレッドの片脚です。「290コールが大量に新規で建った」と読んで方向感の材料にすると、実態を外します。
おすすめの進め方
- Conversion を見る|その出来高は本当に建玉になったのか
- % Multi-Leg を見る|それは単独の売買か、スプレッドの片脚か
- 両方を満たした行だけ、次の Time and Sales で中身を確かめる
この進め方だと、見なくてよい行が最初の2ステップでほとんど落ちます。
プット側にも同じ構造が出ていました。11月20日満期310プットは Conversion 91.7% ですが %Multi-Leg が90.2%。一方、2027年1月15日満期230プットは Conversion 86.7% で単独レッグが99.4%です。後者のほうが、単独の建玉としては素直に読める行になります。
手順④:Time and Sales で、実際の約定まで下りる
ここまでで「この建玉は見る価値がある」と絞れたら、最後に約定そのものを見ます。銘柄ページの OPTIONS → Time and Sales です。

AAPL の8月7日は222,899件の約定が記録されていました。1件ごとに、時刻・満期・コール/プット・権利行使価格・数量・価格・そのときの買い気配と売り気配・Side・IV・デルタ・建玉・取引所・約定条件が並びます。
特に見る価値があるのは次の2列です。
- Side:その約定が板のどこで成立したか。画面下の凡例では Below(買い気配より下)/ Bid(買い気配ちょうど)/ Mid(買い気配と売り気配の間)/ Ask(売り気配ちょうど)/ Above(売り気配より上)と定義されています。Ask で約定していれば買い手が能動的に取りに行った、Bid なら売り手が能動的だった、と読むのが一般的です。
- Condition:Regular / AutoExecution / IntermarketSweep / MultiLeg / StockContingent など。ここが MultiLeg なら、Churn タブの %Multi-Leg と同じことが1件単位で確認できます。
実際、画面の中に 8月10日満期325コール(建玉4,678)の約定行がありました。これは Churn タブで Conversion 48.4% と出ていたのとまったく同じ建玉です。建玉の数字が一致するので、ダッシュボードから約定明細まで同じ玉を追えていることが確認できます。
もうひとつ、IV 列の使い方があります。大きめの約定がどのIVで成立したかを並べると、その建玉が実際に取引されている水準が見えてきます。板に出ている気配ではなく、実際に約定した水準です。値付けの目安を作るときには、こちらのほうが実態に近い基準になります。
この画面を使うときに気をつけたいこと
4つの注意点
- 建玉の更新は翌営業日です。 建玉は清算機関が確定させるため、当日の取引が反映されるのは翌朝です。「今日の建玉」を見ているつもりが前日の確定値、というずれは最初に押さえておいてください。
- Conversion が高くても、方向が分かるわけではありません。 新しい建玉が増えたことは分かっても、買い手側なのか売り手側なのかは Churn タブだけでは決まりません。Indicator の4分類も推定です。
- %Multi-Leg が高い行は、単独の材料として使えません。 スプレッドの片脚を「大口の強気」と読むのが、この手の分析でいちばん起きやすい誤りです。
- 数字が大きい=重要、ではありません。 出来高129,436枚で Conversion 10.6% の行より、出来高7,751枚で48.4% の行のほうが、新規ポジションという意味では濃い動きです。目立つ数字から入ると逆の結論になります。
よくある質問(FAQ)
Q. Conversion は何%あれば「新規の建て」と考えてよいですか。
A. 固定のしきい値はありません。同じ銘柄の他の満期と比べるのが実務的です。今回のAAPLでは満期によって2%から96%まで開きがあり、その中での相対比較が意味を持ちます。絶対値で線を引くと、満期の近い限月がほぼ全部落ちてしまいます。
Q. Volume/ΔOI と Conversion は何が違いますか。
A. 同じことを逆向きに表しているだけです。Volume/ΔOI が3.4なら Conversion は約29%(1÷3.4)です。建玉1枚あたり何枚の売買が必要だったかを見たいときは前者、出来高のうち何割が残ったかを見たいときは後者が直感的です。
Q. この画面は無料でも見られますか。
A. Market Chameleon は無料でも一部の建玉データを確認できますが、Churn タブのような詳細な内訳は有料プランの範囲です。実際の表示範囲はプランと時期で変わりますので、無料トライアルで手元の画面を確認されるのが確実です。
Q. プットコール比率が下がっていたら強気と読んでよいですか。
A. そう単純ではありません。プットは保険として買われることも多く、比率の低下がそのまま強気を意味するとは限りません。この記事の手順のとおり、比率は入口の目印として使い、中身は Churn と Time and Sales で確かめる流れが安全です。
まとめ
- 出来高と建玉の増加は別の量です。「出来高が多い=新しい建玉が増えた」ではありません
- Dashboard(
/Reports/OpenInterestDashboard)で建玉が動いた銘柄・建玉を拾い、銘柄ページの Open Interest で水準と5日の流れを見ます - Churn タブの Conversion が「出来高のうち何%が建玉として残ったか」、% Multi-Leg が「それがスプレッドの片脚かどうか」を教えてくれます
- AAPLの実測では、出来高129,436枚でConversion 10.6%の行と、出来高7,751枚で48.4%の行が同じ日に並んでいました。目立つ数字が濃い動きとは限りません
- 建玉の増減とIVの増減の4分類(Long Buildup / Short Buildup / Long Liquidation / Short Covering)で方向の推定を1段深められます。ただし推定であって断定ではありません
- 最後に Time and Sales で、Side(板のどちら側で約定したか)と Condition(MultiLegかどうか)まで下りると、建玉の中身が具体的に見えます
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※この記事は投資助言ではなく、根拠ある情報提供として書いています。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。
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