XSP 0DTEオプション6構成の検証|ルールを事前公開して記録します

6構成の平均損益と95%信頼区間。5つが0をまたいでおり統計的に判定不能であることを示すグラフ

検証記録

当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。本記事の図表はすべて自分の検証記録から作成したものです。

0DTE(ゼロ・デイ・トゥ・エクスパイレーション=当日満期)オプションの解説は数多くありますが、宣言したルールを変えずに全日程を記録した結果までは、なかなか見当たりません。本記事では、XSP(S&P500指数オプションの1/10サイズ)を対象に、6つの構成を結果が出る前にルール固定して公開し、記録を続ける検証の設計と、30営業日時点の途中経過をご紹介します。

この記事でわかること

  • 検証対象とする6構成の具体的なレグ構成と管理ルール
  • 30営業日時点の実測値(平均損益・勝率)
  • 統計的に「勝ち負けを判定できる構成」と「まだ判定できない構成」の区別
  • 各構成の判定に必要な試行数の見積もり
  • 検証で使う想定変動幅を Market Chameleon で確認する方法
6構成の平均損益と95%信頼区間。5つが0をまたいでおり統計的に判定不能であることを示すグラフ
6構成中5つは信頼区間が0をまたぐ=勝ちとも負けとも言えない(2026-06-08〜07-17・30営業日)

事前登録という検証方法

本検証では、6構成のルールを結果が出る前にすべて公開します。後から条件を追加したり、特定の期間を除外したりできないようにするためです。医学の臨床試験で用いられる事前登録と同じ考え方になります。

あわせて、次の点を検証期間中の運用ルールとして固定します。

検証の運用ルール

  • 登録した構成のルールは、検証期間中は変更しない
  • 変更が必要な場合は新しい構成として追加し、元の構成も残す
  • 結果の公開時は、成績の良い構成だけでなく全構成の結果を掲載する
  • 数値はすべて実測記録から算出し、バックテスト値を実績として扱わない
  • 実資金は投入せず、すべてペーパー(仮想)記録とする

検証対象の6構成

対象はXSPの当日満期オプションです。エントリーは毎営業日9:35 AM ET、1枚固定とします。約定価格は売りレグをBid、買いレグをAskとして記録します。決済値はSPX終値÷10です。

# 構成 レグ 管理ルール
ATM アイアン・フライ ATM売り×2 + ±5買い×2 利確50% / 損切200% / 15:45決済
①と同一構成 同上 なし(満期保有・対照群)
アイアン・コンドル ±3売り + ±8買い 利確50% / 損切200% / 15:45決済
ATM ロング・ストラドル ATM買い×2 利確100% / 15:45決済
ブル・プット・スプレッド ATM売り + ATM-3買い 満期保有(月曜・特定ボラティリティ帯のみ)
ロング・ストラングル ATM±2買い 満期保有(木曜・特定ボラティリティ帯のみ)

①と②は建玉が同一で、管理ルールの有無だけが異なります。利確50%・損切200%は0DTEの解説で頻繁に見られる水準ですが、利益は受取クレジットの半分で打ち切り、損失は2倍まで許容する非対称な設定です。対照群を置くことで、この管理ルール自体の効果を分離して測定できます。

同一建玉のアイアン・フライについて、管理ルールありと満期保有の累積損益を比較したグラフ

同じ建玉でも、利確50%・損切200%を課すと後半で明確に乖離する

管理ルールの検証には日中の値動きが必要なため、1分足で全時刻を再現しています。利確・損切の水準に到達した時点を、事後に正確に判定するためです。

30営業日時点の記録

2026年6月8日から7月17日までの30営業日を記録しました。

構成 試行数 平均損益 勝率
①アイアン・フライ 管理あり 27 -$78.85 33.3%
②アイアン・フライ 満期保有 27 -$37.71 37.0%
③アイアン・コンドル 28 -$19.00 64.3%
④ロング・ストラドル 28 +$1.50 46.4%
⑤ブル・プット・スプレッド 4 -$60.00 50.0%
⑥ロング・ストラングル 5 -$105.58 20.0%

統計的な判定結果

合計値がマイナスであることと、統計的に負けと判定できることは同じではありません。1回ごとの損益の散らばりが大きい場合、平均値がゼロと区別できない状態が続きます。同じ記録をt検定で評価すると次のようになります。

構成 p値 95%信頼区間 判定
①アイアン・フライ 管理あり 0.006 -$133 〜 -$24 負けと判定できる
②アイアン・フライ 満期保有 0.17 -$92 〜 +$17 判定不能
③アイアン・コンドル 0.40 -$65 〜 +$27 判定不能
④ロング・ストラドル 0.98 -$99 〜 +$102 判定不能
⑤ブル・プット・スプレッド 0.52 -$326 〜 +$206 判定不能
⑥ロング・ストラングル 0.10 -$246 〜 +$34 判定不能

6構成のうち5つは、信頼区間がゼロをまたいでいます。現時点で勝ち負けを判定できるのは①のみです。特に⑤は信頼区間が -$326 から +$206 に及び、試行数が4件では判断材料になりません。途中経過の合計値だけで構成の優劣を判断すると、判断を誤ります。

判定に必要な試行数

観測された散らばりから、各構成が統計的な判定に到達するまでの試行数を見積もりました。6構成を同時に検定しているため、多重比較の補正を適用した値です。

構成 現在 必要 到達時期の目安
①アイアン・フライ 管理あり 27 37 約2週間
②アイアン・フライ 満期保有 27 161 約7ヶ月
③アイアン・コンドル 28 471 約23ヶ月
④ロング・ストラドル 28 362,451 50年以上
⑤ブル・プット・スプレッド 4 94 約32ヶ月
⑥ロング・ストラングル 5 14 約2.5ヶ月
各構成の判定に必要な試行数と現在の試行数を対数軸で比較した棒グラフ

判定に必要な試行数(6構成の同時検定を補正した値)。④は桁が違う

④は50年以上という結果になりました。これは成績が特に悪いという意味ではありません。平均が+$1.50とほぼゼロである一方、1回ごとの振れ幅が$260あるため、ゼロとの差を統計的に検出することが原理的に困難であることを示しています。

③についても、判定には約23ヶ月を要します。半年間の検証では、6構成のうち4つは判定に到達しない見込みです。この点も結果の公開時に明示します。

この見積もりの前提

  • 必要試行数は、観測された平均差が真の値であると仮定した場合の下限です
  • 真の効果がより小さい場合、必要試行数は増加します(差の2乗に反比例します)
  • 検証期間は6週間・単一の相場環境であり、他の局面では結果が異なる可能性があります
  • レグ幅・利確損切水準・決済時刻は、すべて自分で決めた値です

Market Chameleon での想定変動幅の確認方法

本検証では、その日の想定変動幅(Expected Move)を毎営業日判定し、相場環境を分類しています。ATMのコールとプットを合算した価格(ストラドル価格)が原資産価格の何%にあたるかを算出し、0.4%未満、0.4〜0.7%といった区分で日を分けています。③のアイアン・コンドルで±3を売る設定も、この想定変動幅の外縁に対応しています。

同じ数値は Market Chameleon の Expected Move および IV(インプライド・ボラティリティ)の画面で確認できます。自分で計算しなくても、その日の想定変動幅を把握できます。イベント日(CPI・雇用統計・FOMC)の判定も、Event カレンダーで確認できます。

なお本検証の価格データには ThetaData の実測 bid/ask を使用しています。Market Chameleon は日々の相場環境の確認に用いるツールという位置づけです。

よくある質問

Q. なぜ結果が出る前にルールを公開するのですか。

A. 検証後に条件を追加したり期間を除外したりすると、都合の良い結果だけを選び出すことが可能になるためです。ルールを先に固定して公開しておけば、後から変更した場合にその事実が残ります。多数の構成を試して成績の良いものだけを紹介する形式では、偶然良く見えた構成を選んでいる可能性を排除できません。

Q. 勝率が64.3%の③が、なぜ平均損益ではマイナスなのですか。

A. 勝率と平均損益は別の指標です。③は勝ちの回数が多い一方、1回あたりの利益が小さく、負けた際の損失が大きい構成です。クレジット(受取)系の構成では、この形になることが少なくありません。勝率の高さだけで構成を評価すると、判断を誤ります。

まとめ

  • XSP当日満期オプションの6構成について、ルールを事前に固定して記録を開始しました
  • 30営業日時点では、6構成のうち5つが統計的に判定不能です
  • 判定できるのは①のATMアイアン・フライ(管理あり)のみで、この期間はマイナスでした
  • ④は振れ幅が大きく、判定に必要な試行数が現実的な範囲を超えています
  • 次回は①が判定に到達する時点で、管理ルールの有無による差を報告します

検証の記録は、成績の良否にかかわらず数値で公開します。

※この記事は投資助言ではなく、根拠ある情報提供として書いています。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。

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